風俗営業の許可申請は自分でできる?
風俗営業をするなら必ず営業許可が必要です。行政書士に依頼すると、状況や行政書士にもよりますが数十万程度の報酬が発生します。
家賃、内装費、備品、人件費etc.多額の出費があるのに、風俗営業の申請くらい節約できないか?と考えるのは当然でしょう。
「風俗営業の許可申請自分でできないかな?」
結論から申します。
「できます!」
そもそも、行政機関への許認可や届出は誰でもできるようになっています。管轄の警察署のホームページや問い合わせで必要書類は分かりますので調べてみてください。
風俗営業、特定遊興飲食店営業(様式一覧) 警視庁(東京都以外の方は管轄の警察署のホームページをご確認ください)
しかし…「行政書士に依頼した方が賢明かもしれません」
なぜ行政書士に依頼した方が賢明かというと、風俗営業の許可申請は他の許認可申請と比べても、手間がかかり、自分でやるには費用対効果が低いからです。 許認可もいろいろありますが、風俗営業許可申請は、その中でも難易度の高いものではないかと思っています。
では、どういう点が難しいのでしょうか?

以下、風俗営業の許可申請において難しいであろう点を挙げてみます
読んだ後に、自分で申請できるという方は是非自分でやってみてください。
- 必要書類の内容が分からない
- 保全対象施設かどうかが分からない
- 内装の細かい規定が分からない
- 進め方の手順が分からない
- 図面の書き方が分からない
1. 必要書類の内容が分からない

管轄の警察署のHPに行けば、必要書類が載っていますので、それを揃えればおしまい!
...確かにそうですが
その書類は要件を満たしてますか?
例えば法人名義で申請する場合、必要書類に法人の履歴事項全部証明書(登記簿)があります。履歴事項全部証明書は法務局で誰でも取得できるので、用意するのは簡単ですね。
「そういえば以前取得したものがあるなぁ」なんて古いもの使おうとしてませんか? 使えるのは申請時から逆算して3ヵ月前のものです。
登記事項は特に変更ないから大丈夫だと思ってませんか?
そもそも履歴事項全部証明書のどこがチェックされているか分かりますか?
- 法人の名称と住所
- 目的(事業内容)
- 役員とその住所
これらが主にチェックされます。
目的(事業内容)には風俗営業の文言が入っていますか? 役員の住所は住民票と一致してますか?
こんな細かいところまで気が回りませんよね? 警察が親切に前もって教えてくれることはありません。
では、気づかずに提出した場合はどうなるでしょう?
もちろん書類不備の為、申請は受け付けられません。まずは変更登記をしてから再度申請となります。
登記には約2週間くらいかかるので、それだけ申請が遅れることになります。書類準備段階で時間がかかるのはしょうがないとしても申請段階からの延期は結構つらいものがあります。
履歴事項全部証明書以外の書類にも疑問に思うところも出てくるでしょう。 その都度警察署に問い合わせれば答えてくれるでしょうが、申請時に初めて分かる事もあるかもしれません。
とりあえず変更登記はまず最初にやりましょう。
2. 保全対象施設かどうか分からない

風俗営業はどこでもできるわけではありません。
一定の距離内に保全対象施設がある場合は、そもそも許可されません。 最悪なのは保全対象施設を理由に許可されなかったり、内装も全て終わっている段階で、保全対象施設があることが判明した場合です。
保全対象施設がある以上、いくら警察に泣きついても許可されることはありません! それまでに費やした費用が全て無駄になってしまいます。
一定の距離は申請する店舗の場所や用途地域によって異なりますが、これは各管轄警察署のHPに載っていると思いますので、物件を契約する前に保全対象施設を確認することが重要です。
周辺調査はGooleMap等で確認するだけでなく、実際に現地へ行って、一軒一軒確認します。Mapに載ってない施設がある可能性もあるからです。
同じビルや隣に風俗営業店があるからと言って油断してはいけません。 そもそも、その店が無許可営業の可能性もゼロではないし、その店舗が許可された時にはなかった保全対象施設が今はあるかもしれません。
保全対象施設とはどういった施設でしょうか?
学校、病院、公園、保育園等が該当します。
では学校といっても専門学校は保全対象施設になるのでしょうか? クリニックは病院に含まれる? 滑り台があるだけの狭い空間は公園と同じ扱い? 認可されてない保育園や小規模保育と言われる施設は保全対象施設?
実はこのような判断に迷う施設は少なくありません。
そのような時は、警察へ確認すべき...と言いたいところですが、警察は答えてくれません(涙)
警察の答えは決まってこうです「申請してください、その申請内容を基に判断します」
いやいや、こっちは申請して不許可になったらそれまでの費用が全て無駄になるんですよ! 保全対象施設に該当するかどうかを答えてくれればそれで解決するのに!
...と言ったところで警察の答えが変わるわけではありません。 自力で何とかするしかないのです!
3. 内装の細かい規定が分からない

風俗営業の内装には細かい規定があります。
照明の明るさの基準があり、明るさが一定基準を下回ってはいけません。この基準は風営法1~5号によって異なる為、管轄警察のHPにて確認してくだい。 スイッチに調光器も使用できません(最近は少し緩くなって調光器の使用は可能です、ただし最小値が基準値を下回らないように設定する必要があります)
面積も一定以上でなければなりません。
視界を妨げる設備があってはなりません。基準は高さ1mとされ1mを超えるものは、例えそれがイスのような固定物でなかったとしても1mを超えていれば、視界を妨げるものと判断されます。
ではアクリル板のような透明なものであれば、視界を妨げないのかと言えば、答えはNOです。なぜならアクリル板に何か貼ってしまえば、いつでも視界を妨げる壁になりますからね。
しかし、1mを超えていれば何でもかんでも絶対ダメかというとそうとも限りません。
このあたりの判断は各管轄の警察(正確には各都道府県の公安委員会)によって微妙に違ってきますので、実際に管轄警察に図面を持参して相談しましょう。
内装に関しては、図面を持参して具体的に相談すれば、結構きちんと答えてくれる事が多い印象です。
内装業者が風営法に慣れていない場合は、内装業者ときちんと相談し、施工途中でも逐次チェックすべきでしょう。
内装に関する規定は慣れている行政書士でも判断に迷うこともあり、自分で判断することは危険です。
4. 進め方の手順が分からない

風俗営業の許可申請は、準備から許可が降りるまでの期間が長いので手順を間違うと期間が大幅に伸びてしまう可能性があります。
例えば、先に述べたように、申請後に変更登記が必要であったことが発覚した場合、変更登記を済ませなければ申請を受け付けてくれません。
風俗営業の店舗では飲食店としても営業する場合が多いと思いますが、その場合は添付書類に飲食店営業許可証が含まれます。
では飲食店の営業許可申請はいつすればよいのでしょうか? 内装が完成してから?
保健所の実地検査から許可証が発行されるまで約2週間かかるので、内装のが完成してからでは、この約2週間がもったいないのです。
実は飲食店の営業許可証発行を待つ必要はありません。 実地検査に合格すれば営業許可証の引換証がもらえるので、引き換え証で大丈夫な場合もあれば、それがだめでも、営業許可証の発行待ちであることを証明する書類を保健所が発行してくれますので、その書類で代替できます。実際に許可証が発行された時に差替えればいいのです。
飲食店営業許可申請にしても、申請書に食品衛生責任者を記入する欄があるのですが、必ずしも食品衛生責任者講習を終わらせていない状態であっても申請できたり、実地検査も内装全てが完成していなくでも、保健所がチェックする箇所の内装が完成していれば問題ないなど、期間短縮ポイントはいくつかあります。
図面作成に関しても、実は内装完成前に図面を提出する方法もあるのですが、これは経験によって培われるものですので、自分でやる場合は気にしなくていいでしょう。
これらの短縮ポイントを知っているかどうかで、風俗営業の許可までの期間が1カ月ほど違うと言っても過言ではありません。
5. 図面の書き方が分からない

必要書類を確認すると複数の図面があることに気づくでしょう。
そう、この図面こそが風俗営業の許可申請を難しくしている最大の要因なのです!
風俗営業の許可申請は行政書士の専門分野ですが、この分野に携わっている行政書士は多くありません。それはズバリ図面が引けないからです。 考えると分かりますが、法律系の資格なので図面が引けない人が多いのは当たり前と言えば当たり前の話です。
では、図面を引ける行政書士はどのようにして図面が引けるようになったかと言えば、誰かに弟子入りするか、私のように独学で習得したのです。 幸い、風俗営業の許可申請に必要とされる図面の精度は建築士程高くありません。 とはいえ、ある程度正確な図面を引く必要があります。
【解決法1】 自分で申請する場合は、図面だけ行政書士に依頼する
自分で申請するにしても、図面だけは行政書士に依頼した方がいいでしょう。 CADを使ってある程度の図面が引けるのであればよいのですが、そうでない限り習得する労力と時間がかかりすぎます。
デメリット: 図面の依頼だけでもそれなりに報酬が発生するので、出費を抑えるという趣旨が薄れてしまします。 また、依頼した行政書士が実地検査に立ち会ってくれるならいいですが、立ち会ってくれない場合は、図面の質問に対して答えられない可能性があります。
【解決法2】 独学で習得する。
図面を作成する場合、基本的にはCADというソフトを使うことになります。CADの性能や価格はピンキリで高いものでは数十万しますが、そんな高価なソフトを使う必要はありません。
実は「jw_cad」という優れたオープンソースのフリーソフトがあるので、これを使いましょう。
かなり知名度の高いソフトなので書籍も多く販売されています。
内装業者の図面ではいけないのか?
ダメです! 参考にはなりますが提出できるものではありません。
まず求められるものと様式が違います。 ここで求められるのは営業所の面積と営業所を客室、調理場その他に区切ったそれぞれの面積です。営業所の面積は壁芯から計測しないといけませんが内装業が壁芯からの距離を測ることはありません。
さら、内装業者はスケルトンの状態で計測して、それに合わせて施工しますが、我々が計測するのは、完成後の距離や面積であり、壁等を足したしするので、大抵の場合内装業者の図面と我々の作成する図面が一致することはありません。
実地検査ではレーザー測定器で正確に距離を測りますので、内装業者の図面だと大きな誤差が生じることは明らかです。
イラストレーターで図面を作成することは可能?
はい、恐らく可能だと思います、しかしお勧めしません!
私も最初はCADを使ったことがなかったのでイラストレーターのようなソフトでできないか考えました。
実際はCADを習得する選択をしたので、イラストレーターで作成した経験がないのですが、イラストレーター等のソフトに精通しているならできるのかもしれません。 しかし、それでもやはりお勧めはしません。
理由は、まず矛盾に気づきずらいということ。計測値はミリ単位を省略して表示したりします。そうすると左右の壁の長さの合計が違ったりすることがありますがCADで作成していると実際の計測結果を図面に縮小して落とし込むので図面にも矛盾に気づきやすいのです。
また、面積を計算する際に、実際の客室がキレイな四角でなかったり壁が斜めっている場合も多々あり、そんな時は実際にはない線を図面に引くことがありますが、CADならその線の距離を正確に測ることができますが、恐らくイラストレーターでは難しいのではないでしょうか?
申請までの期間を短縮したいなら、図面を作成するタイミングも重要です。
全ての内装が終わってから図面作成をするのなら正直楽なのですが、それでは遅いのです。
風俗営業の許可には標準処理期間が設けられており、東京都の場合は55営業日とされています。
つまり、内装工事が完了してから申請した場合、そこから約2~3ヵ月待たなければならないのです
申請が遅くなれば、許可も遅くなり、空家賃が発生しますし、オープン期間が延びればそれだけ機会損失になります。
なので、実際は、内装が完成していないタイミングで図面を作成するのですが、このタイミングは説明が難しいので、自分で図面を作成する場合は、あまり急ぎすぎず余裕をもったオープン日を設定することが肝心です。
まとめ
いかがでしたか?
自分でもできそうな気がしてきましたか?
まだまだ説明しきれていないこともありますが、自分でできると思う方はチャレンジしてみてください。
いや、「業務委託する」「とりあえず一度相談してみたい」という方は弊所までご連絡ください
場所にもよりますが遠方でも出張申請可能です。

