ディーラーは“いかさま”できる?

「ディーラーはいかさまできるの?」という質問をよくいただきます。

「いかさま」とまではいかずとも、

「ルーレットで狙った数字に落とせるの?」とか「ゲームをコントロールできる?」といった質問を受けます。

今回は、シンガポールのカジノで実際に5年半、ディーラースーパーバイザーとして働いた経験のある私が、実体験をもとにお答えしたいと思います。

結論から言うと、

不可能ではないかもしれないが、限りなく不可能に近い!

理由は次の通りです。ルーレットとカードゲームに分けて解説します。

♠ルーレット

1. 常に監視カメラとサーベランスに見られている

カジノに行ったら天井を見てみて下さい。とんでもない数の監視カメラが天井にあることに気づくでしょう。天井が高かったり、吹き抜けになっているところは、柱やテーブルにあります。

その大量の監視カメラでサーベランスという部門の人が、常にカジノ内を監視しています。

大勢の客に何百というテーブルがあるのに、監視できるのかという疑問もあるかと思います。

確かに常に監視するのは無理ですね、ただ、どこかのテーブルで客が急に勝ち始めたり、大きな金額が動くと、サーベランスにその情報が行き、そのテーブルと客の監視が始まります。

通常サーベランスの部屋はどこにあるか従業員にも知らされず、サーベランスで働く人はディーラーとはコミュニケーションをとりません。私もサーベランスでどの様な操作がが行われているか実際に見たことありませんが、長年ディーラーとして働いていると、サーベランスからスーパーバイザーを通して連絡が来ることがあるので、だいたい察しがつきます。

つまりディーラーに不審な動作がある時だけでなく、データ上も異変があればカメラによる監視が始まります。

2. ディーラーに数字を狙わせない工夫がいっぱいある。

客側の視点からだけでは、なかなか分かりにくいのですが、ルーレットにはディーラが狙ったところに落とせない様々な工夫が施されています。

1. チェックインまで担当テーブルが分からない

これはルーレットだけではないのですが、ディーラーは当日出勤して現場に出て、そこで初めて自分の担当テーブルが分かるシステムになっているので、事前にテーブルに細工したり、知人に担当テーブルを知らせる事ができません。

2. ルーレットテーブルは右にウィール(ルーレットで回してボールを落とす装置)があるタイプと左にウィールがあるタイプがある。

ルーレットテーブルには右にウィールがあるタイプと左にウィールがあるタイプのテーブルがあります。という事はディーラーは担当テーブルによって右手でスピンする場合と左手でスピンする必要があるという事です。左右両方の手でスピンをコントロールするのは至難の業です。

3. ウィールは必ず手動回し、でスピンは毎回逆回転。

スピンする際は、毎回ウィールを逆回転させ、ボールはウィールとは逆回転になるようにスピンしなければなりません。さらにウィールは機械で回しているのではなく手動となっています。機械で回すことも可能ですが、恐らく回転の速さを一定にさせないというセキュリティ上の意味が大きいように思います。

テーブルによって左右どちらの手でスピンするかが決まり、毎回逆回転でウィールとスピンをしなくてはならないに状況で、狙った数字に落とすことはとんでもなく難しいと思いませんか?

4. ウィールの数字近辺に縦横に配置された突起物がある。

一般的にはウィールの数字周りには水平・垂直に配置された突起物があります。これは、この突起物にボールを当ててボールの軌道を変える為ですが、この突起物に当たると軌道が変わるし、だからと言ってこの突起物を避けるのは至難の業です。

5. ウィールの数字間の敷居は意外と低い

最終的にボールが落ちる数字が書いてある場所ですが、数字と数字を仕切っている壁の高さが意外と低いので、ボールが、数字のある場所に落ちた後でもボールが何周もすることがあります。

6. ウィールやボールの大きさには複数種類がある。

プレイヤー側からすると気にすることはないと思いますが、実は材質の異なるウィールがあったり、大きさの異なるボールを使っています。

ウィールの材質が違ったり、ボールの大きさが違うと同じ強さでスピンをしても、ボールの回転の仕方も変わるし、回転数も大きく違ってきます。

7. ボールをスピンする時はウィールを見てはいけない。

基本的にディーラーはボールをスピンする時は、ウィールを見てはいけません。少しでも狙いを定めさせないためです。

♣カードゲーム

1. 常に監視カメラとサーベランスに見られている。

先のルーレットで述べたものと同じです。

2. カードシャッフルは既に行われ、厳重に管理されている。

カードゲームのシャッフルはカード室でシャッフルされ、シャッフルされたものは、シールされ厳重に管理されます。バカラで使われるカードは基本1回使った後に処分されるし、繰り返し使うブラックジャック等のカードは一定時間が過ぎると交換され、使用済みのカードは処分されます。

3. カードを引く際は機械を使う。

昔なら、次に引くカードを一番上じゃなくで2枚目を引くなどのテクニックもあったのかもしれませんが、現在はほとんどのカジノで、シャッフルしたカードをシューと呼ばれる機会に入れ、そこからカードを引いていきます。

そのマシーンでは何のカードを引いたか常に管理しているので、イレギュラーなカードの引き方をするとエラーが出てしまいます。

カード読み取り機能のないシューもありますが、それでもディーラー自体が次に何のカードが来るのかわかっていないので、引く順番を変えることに意味はありません。

ここまで述べたように、ルーレットでは特定の数字を狙わせない工夫が幾重にもあるし、カードゲームにおいても、ディーラーが不正を働くことがいかに難しいか分かっていただけたでしょうか?

そもそも、ディーラーがゲームをコントロールできるとして、本当に困るのは誰でしょうか?

仮に、狙い通りの数字にボールを落とせるルーレットディーラーや、思い通りにゲームをコントロールできるカードゲームディーラーがいたとしたら、カジノ側が困ると思いませんか?

カジノゲームの様なギャンブルには「ハウスエッジ(控除率)」というものがあり、何もしなくても、多くのゲーム回数をこなすことによって「大数の法則」でカジノ側が勝つようなシステムになっています。

大数の法則(たいすうのほうそく、: Law of Large Numbers)とは、確率論・統計学における基本定理の一つ。公理的確率により構成される確率空間の体系は、統計学的確率と矛盾しないことを保証する定理である。

たとえばサイコロを振り、出た目を記録することを考える。この試行回数を限りなく増やせば、出た目の標本平均が目の平均である 3.5 の近傍から外れる確率はいくらでも小さくなる。これは大数の法則から導かれる帰結の典型例である。より一般に、大数の法則は「独立同分布に従う可積分な確率変数列の標本平均は平均に収束する」と述べられる。

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

ゲームをコントロールできるディーラーがいたら、どんなことをするか分からないので、カジノ側にとってはリスクでしかないのです。

恥ずかしながら、実は私も、ディーラーをやるまでは、ディーラとはプレイヤーと勝負するものだと思っていたのですが、実際にはディーラーの意思が介在する余地はなく、ディーラーに求められるスキルは、スムーズかつ正確にゲームを進行することです。

私が実際働いていた時に、日本人のプレイヤーに限って「今、狙われた」とか「ディーラ―にやられた」とか言っている人がいました。その日本人プレイヤーの方は私が日本人であることに気づかず話していたのですが、私からしたら少し滑稽な景色でもありました。

この記事を読んだ方は、カジノに行って「今、何かやっただろう」なんてディーラーに向かって恥ずかしい事は言わないで下さいね(笑)

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