飲食店の営業を始る場合、いったいどのような流れで営業許可をとればいいのでしょうか?

飲食店の営業許可を取得するにあたっては、保健所に書類を提出したり所定の検査を受けたりする必要があります。

飲食店の営業許可を取得するまでの流れ、費用、検査で見られるポイントなどを網羅的に解説します。これから飲食店を始めようと思う人はぜひ最後までご覧ください。

1.飲食店の営業許可とは

飲食店営業許可

飲食店を開業するために必ず必要なのが「飲食店営業許可」です。保健所に申請し、検査に合格することによって取得することができます。

飲食店営業許可を取得するには、大きく分けて以下の2つの要件が必要です。

  • 食品衛生責任者を置くこと
  • 保健所の検査をクリアし、営業許可書を取得していること

人に関する要件では、営業許可を申請する人が欠格事由に当たる場合は営業許可を受けられません。欠格事由としては、以前に食品衛生法違反で処分を受けていること、営業許可を取り消されてから2年以内であることなどが挙げられます。

食品衛生責任者

飲食物を提供するお店は、食品衛生責任者をおき、保健所に届け出なければなりません。食品衛生責任者とは、食品を扱う店舗において、食品の衛生管理を行う責任者のことで、飲食店の衛生管理が法令に反しないように管理する役目を担っています。

また、一人の食品衛生責任者がその職務を務められるのは一店舗です。他の店舗と兼任することはできません。

食品衛生責任者の資格は、以下の人が取得することができます。
①栄養士、調理師、製菓衛生師、食鳥処理衛生管理者、と畜場法に規定する衛生管理責任者若しくは作業衛生責任者、船舶料理士、食品衛生管理者(注1)の有資格者。
②保健所長(特別区にあっては、特別区の区長)が実施する食品衛生責任者になるための講習会または知事の指定した講習会の受講修了者。

(引用:食品衛生責任者 – 一般社団法人東京都食品衛生協会)

もし上記の資格をもっていない場合は、「食品衛生責任者養成講習会」を受講することで資格を取得することができます。

講習は各都道府県の食品衛生協会で実施しているので、講習の日程などについて詳しく知りたい人は、各団体のホームページを確認してみてください。

公益社団法人日本食品衛生協会

営業許可書

営業許可が下りると保健所から「営業許可書」が交付されます。

営業許可書を取得するには、申請書類を準備し、保健所の検査を通過しなければなりません。
開業したい日から逆算して余裕をもって申請するようにしましょう。

2.営業許可取得までの流れと期間・費用

次に、飲食店の営業許可を得るまでの流れと期間、費用について解説します。
スムーズに手続きを進めるために、大枠の流れを知っておきましょう。

営業許可取得の流れと期間

申請から営業許可が下りるまで約2〜3週間です。

1.保健所に事前相談する

飲食店なら、保健所が認める規定を無視して内装を考えることはできません。検査基準は飲食店の業態や地区の保健所ごとに若干異なりますので、内装業者と相談しつつ、保健所との事前相談で施設や設備要件について疑問点があれば、あらかじめ確認しておくようにしましょう内装が終わってから修正するのはお金も時間もかかりますかからね。

2.営業許可の申請を行う

必要書類を揃えて管轄の保健所へ提出します。同時に申請料を支払います。

3.施設検査日程などの調整

検査の日程を担当者と決めますが、保健所の込み具合によって、数日後に検査できる場合もあれば1~2週間先まで予約が取れない場合もあります。

4.保健所の施設検査

店舗に保健所から担当者が来て申請通りか、保健所が認める基準を満たしているか等を検査します。

5.営業許可書交付

店舗の工事が終わったタイミングとほぼ同時に営業を開始させたいのであれば、工事が完了する前に営業許可を申請し、工事が完了したあとすぐに保健所の担当者に検査をしてもらう手配をするとよいでしょう。

さらに、テイクアウトが可能なお店、店員が客を接待するお店、深夜0時を超えて酒類を提供するお店などは、ほかに申請が必要です。上記に限らず、業態によって資格や届出を要する場合もあるので、施設の所在地を所管する保健所に事前に確認してください。

営業許可取得にかかる費用

申請料金は飲食店の営業形態や、地域、保健所によって異なりますが、だいたい16,000円~19,000円です。

たとえば、東京の新宿区での場合、申請料金は以下の通りです。

飲食店営業18,300円
喫茶店営業11,500円
乳類販売業11,500円
飲食店営業(臨時移動)5,600円
氷雪製造業25,200円

(出典:営業許可業種と申請手数料一覧|新宿区)

上の表のように、飲食店の業態、販売店なのか製造業なのかによっても料金は違います。あらかじめ申請する保健所のホームページなどで確認するようにしましょう。

営業許可の更新

飲食店の営業許可は一度取得したら、永久に有効というわけでなく、定期的に更新しなければいけません。

営業許可の更新手続きをせずに営業するのは違法行為に当たるので注意しましょう。

営業許可書は営業する業種にもよりますが、一般的には5~8年の有効期限が定められています。

更新期限については、飲食店営業許可書の下部に有効期間が記載されているので、その有効期限の10日前までに更新手続きを行うようにしてください。

更新に必要なものは以下のとおりです。

  • 飲食店営業許可書
  • 所定の更新料

上記の2点を持って保健所に行き、更新の手続きを行います。

更新の際は、お店の衛生面に問題がないか、設備が壊れていないかなどをチェックするための実地調査があります。検査終了後、2、3日後には新しい営業許可書に交換されることが多いようです。

3.申請に必要な書類

サイン

許可をとるにあたって、所定の申請書類を揃えて保健所に提出しましょう。基本的には以下の書類が必要です。

必要書類

  1. 営業許可申請書 1通
  2. 施設の構造及び設備を示す図面 2通
  3. 食品衛生責任者の資格を証するもの
  4. 水質検査成績書
  5. (法人が申請する場合の登記事項証明書)

※以前は営業所の詳細を記入した「営業設備の大要・配置図」及び営業所の場所を示す「場所の見取り図」が必要でしたが、食品衛生法改正に伴い必要なくなりました。個人的には、手間のかかる「営業設備の大要・配置図」がなくなったのは大変有難いですね。

必要書類について詳しく説明していきます。

1.飲食店営業許可申請書

この書類は申請する保健所の窓口でもらう、もしくは、ホームページでダウンロードして準備します。

申請書のフォーマットは保健所によって異なることがあるので、所在地を所管する保健所が発行しているものを使うようにしましょう。

≫営業許可申請書(東京)

2.施設の構造及び設備を示す図面

お店の客室や、厨房のどこに何が設置されているかを示す平面図。内装業者に依頼している場合は、自分で準備しなくてもいいこともあります。

平面図には入り口、厨房、冷蔵庫、トイレ、テーブル、椅子の位置などを平面にかきおこします。

手描きの場合は、ボールペンと定規を使って作成するようにしましょう。

3.食品衛生責任者の資格を証するもの

飲食店の営業許可を取得するには店舗ごとに食品衛生責任者を置かなければなりませんが、その責任者がちゃんと資格を持っているかどうか証明するものを提出する必要があります。

食品衛生責任者となるための講習を受講し、合格した後に渡される「食品衛生責任者手帳」が発行されるので、そちらを提出するのが一般的です。

恐らく多くの場合、各都道府県が実施する食品衛生責任者となるための講習を受講することになると思いますが。いざ受講しようとすると、1カ月以上先まで予約が埋まっていて受講できない事態に直面するかもしれません。食品衛生責任者講習はそれほどに人気があるのです。

では、受講できるまで営業許可申請できないかと言えば、そんなことはありません。申請書には受講予定と記入して、講習を受けた後に、保健所に受講終了証明などを提出すれば大丈夫です。許可が取れたから大丈夫とおろそかにせずに、必ず受講した後は、保健所に届け出ましょう。

ちなみに食品衛生責任者講習は受ける都道府県は店舗の場所にかかわらず、どの都道府県で受けても大丈夫です。ただ、他の都道府県で受講した場合は、受講終了後にもらう食品衛生責任者のプレートに受講した都道府県名が入りますので、プレートを店舗に掲載する場合は違和感があります。

4.水質検査成績書(水道水、専用水道、簡易専用水道以外の場合)

水道水、専用水道、簡易専用水道以外の水を使用する場合はこの書類を出さなければなりません。

ビル内にお店を構えることを考えているなら、ほとんどの場合、ビルで共用の貯水槽にある水を使うことになります。書類は、管理会社か大家さんに問い合わせればもらうことができるでしょう。

5.(法人が申請する場合の登記事項証明書)

以前は、法人が申請する場合は登記事項証明書の添付を求められましたが、現在は申請書に法人番号を記入すれば、登記事項証明書の添付まで求められません。

法人番号は登記事項証明書を取得しなくてもネット上で検索できます。

≫国税庁法人番号公表サイト

保健所によっては提出を求められるかもしれませんので、その場合は法務局で「履歴事項全部証明書」を取得してください。

営業許可を申請する者が法人の場合にのみ提出する資料です。個人事業主として事業を行う場合は、必要ありません。

役所で書類を取得する際は、「履歴事項全部証明書をください」と伝えましょう。

この書類には、法人にまつわる様々な情報が記載されていて、そのうち「目的」という欄があります。この欄に、飲食店の経営という文言が入っているかどうかを確認しましょう。必ずしも飲食店経営の文言が入っていなくても許可が下りる場合もありますが、念のため事前に保健所に確認するのをおすすめします。

4.保健所の検査でみられる設備の要件

書類を提出したあとは、現地調査があります。

保健所の担当者が店舗を訪れ、規定どおりの構造であるか、所定の設備がついているかなどを細かくチェックします。どのような点で調査されるかわからず不安な方もいるかと思いますので、主にチェックを受ける点について解説します。

検査官は、設備が整っているか、衛生面で不備はないかどうかなど細かく検査を行うので、検査前に店舗内を整えておきましょう。

また検査項目や基準は、保健所によって異なる場合があります。事前相談の段階で、どういった点に留意する必要があるかを確認しておくようにしましょう。

検査で見られる主なポイントは以下のとおりです。

  • シンクの幅は基準を満たしているか
  • 厨房とお手洗いに、手洗い場が設置されているか
  • 調理場と客席エリアが分けられているか
  • 給湯器が設置されているか
  • 厨房のなかに蓋付きのゴミ箱があるか
  • 厨房の床が清掃しやすい作りであるか

もし、検査のあとで店内構造や設備の不備が見つかった場合、工事をやり直さなければならず営業開始に支障が出てしまう可能性もあります。

事前相談の時点でどのような店にしたいかなど構想を練っておき、工事の際に確認しておくようにしましょう。

5.許可を取得していないうちから営業を始めてはいけない

お店の規模、業態に関係なく、営業許可を取得せずに飲食店を営業をするのは違法です。

営業許可だけでなく、食品衛生責任者がいないまま放置していたり、規定以外の商品を提供していたりしても、罰則の対象となるので注意してください。

無許可で営業した場合の罰則

営業許可書を取得せずに、無許可で飲食店の営業をした場合は、食品衛生法、風営法に反し2年以下の懲役または200万円以下の罰金が課せられます。

無許可で飲食店を営業し、罰則を受けると、営業を停止する必要があり、さらに2年間営業許可が取得できなくなります。

経済的にも、従業員の雇用に関しても大きな影響を与えるので、必ず営業の許可は取得しましょう。

「小さなお店だしバレないのでは?」と思っても、警察は無許可営業に警戒を強めており、私服警官による調査や抜き打ちで行われる消防署の夜間査察などが入る際に無許可営業が発覚します。

しっかりと営業許可を取得するようにしましょう。

6.専門家に任せて時間を節約

ここまで飲食店営業許可申請の手順をご紹介しました。この記事を読んで、自分で申請しようと思った方はチャレンジしてみて下さい。

ただ、理解したつもりでも実際手続きを進めていけば、思ったより時間がかかってしまうものです。専門家に任せると確かに費用はかかりますが、時間は節約できます。

「忙しくて申請にかける時間がない」「お金を払っても専門家に任せたい」という方は当事務所までお問い合わせください。

当事務所では33,000円(税込)で営業許可申請に関わるほとんどの手続きを代行いたします。

具体的には

  • 許可申請書・図面の作成
  • 保健所との事前打ち合わせ
  • 許可申請書の提出
  • 保健所の検査立会い
  • 営業許可書の受領