手軽になった「スマホ融資」に注意

通信手段としてだけでなく、 いまや日常生活においても必須アイテムとなったスマートフォン(以下 「スマホ」)。アプリをダウンロードすれば、スマホからの手続きだけで手軽にお金を借りることもできるようになりましたが、そこには思わぬ落とし穴もあります。

ここでは手軽だからという理由だけで、スマホ融資を受けて思わぬ落とし穴に落ちないよう、スマホ融資について解説します。

1. スマホ融資はアプリで手続きする個人向け融資

スマホ融資というと新しいサビースのように聞こえますが、多くは既存の消費者金融やカードローン会社が手続き方法のひとつとしてアプリをリリースしたものです。

アプリで手続きを完結できるようになったことで審査や融資までの時間が短縮され、店舗に出向いたり必要書類を郵送する必要がないため、 スピーディな借り入れが可能になりました。
スマホ融資のことを少額融資と表現しているものもありますが、借入限度額は数百万円から中には1,000万円という事業者もあり、上限については少額とはいえません。


しかし「最少額は1万円」という条件も多く、 なかには1,000円というものもあり、少額から借りられる融資であることは間違いありません。

アプリで手続きを完結するための要件は事業者によって異なりますが、借り入れをする際はアプリをダウンロードして、 所定のフォームに必要事項を記入したり、本人確認書類などを読み込んで申し込みをします。その後、メ ー ルで通知された審査結果にしたがって契約をすれば手続きは完了です。


融資されたお金は銀行口座への振り込みや、提携ATMから出金して受け取ることができます。
返済は登録した銀行口座からの自動引き落としのほか、 銀行振込、提携ATMから入金する、というのが一般的な方法です。

2. 事業者は大きく分けて3タイプ

スマホのアプリストアにアクセスし「融資」「お金を借りる」といったキーワードで検索すると、数十ものアプリが表示されるくらいスマホ融資を行う事業者は数多く存在します。
2021年4月に「割賦販売法」が施行され、 10万円までの少額の分割後払いサー ビスを提供する事業者を「登録少額包括信用購入あっせん業者」として登録する制度が創設されました。
これにより少額の信用購入サービスヘの参入条件が緩和されたため今後さらに増えることが予想されています。

現在サービスを提供している主な事業者を大きく分けると「消費者金融系」「銀行カ ー ドロ ーン系」「スマホ決済系」の3タイプです。

消費者金融系

申し込みをした日に融資が実行される、平日以外でも審査や融資を行っているなど、利便性を重視しているのが特徴です。

また、アプリで手続きを行うと郵送物は一切なく、アイコンを社名が入っていないものに着せ替えることができるなどプライバシーヘ配慮する姿勢も見られます。

金利水準は3%~18%程度。

銀行カードローン系

申し込みは24時間365日可能、ただし融資は基本的に最短翌日以降というのが多い。
「消費者金融系」よりも金利は低めですが、審査は厳しいといわれています。

金利水準は1.5%~15%程度。

スマホ決済系

利便性を高めるためにスマホ融資を始めたという「消費者金融系」や「銀行カードローン系」に対し、 新たな収益事業としてサービスを始めた「スマホ決済系」は既存の事業者と異なるサービスも提供している点がポイントです。
例えば、 融資額を現金ではなくキャッシュレス決済の残高にチャ ージしたり(利用額には通常どおりのポイントが付与される)、個人間売買の売上金を返済に充てることもできます。

金利水準は0.8%~18%程度。

3. スマホ融資は「AI」を使った独自基準で審査

これまでの個人向け融資は、 指定信用情報機関に登録されている信用情報や勤務先、勤続年数、雇用形態、年収、家族構成といった属性情報を中心に与信審査を行ってきました。
この方法だと、どうしても自営業者よりも会社員、若年層よりもある程度の社会人経験がある世代のほうが与信枠は大きくなります。

ところがスマホ融資は信用情報だけでなく、購買や取引の履歴、申込時に入力する自身のライフスタイル に関する質問などこれまでとは異なる視点で集めた情報も加え、AIを使った各社独自の基準で審査を行っています。

例えば、通信アプリの運営を行っているA社のスマホ融資サービスでは指定信用情報機関の情報だけでなく、A社のプラットフォーム上での行動傾向データ、利用前に行われる質問に対する回答などを基に、独自のAIを活用して総合的に貸し付け条件を算出し、このスコア(点数)に応じて貸付利率と利用限度額が決まるそうです。

つまりA社のスマホ融資サービスの場合、通信アプリの利用方法や頻度がスコアに影響するということです。

金融機関と通信事業者が設立したフィンテック企業のB社は、利用者が提供した様々な情報をAI技術で分析し、将来の可能性も含めて総合的にスコア化するという独自の審査を行っています。
所定の金融機関や通信会社との取引情報を連携したり、性格やライフスタイル情報の入力、行動習慣の記録など回数を重ねるほど分析精度が高まってスコアが成長し、融資条件が見直されるという仕組みのだそうです。

4. 「後払い」「翌月払い」決済に注意

スマホ融資ではありませんが、最近「後払い」「翌月払い」というBNPL(Buy Now, Pay later)と呼ばれ るスマホ決済も増えています。

事前にチャージをしなくても利用できる点が便利という声もありますが、後から決済をしないといけないという意味では借り入れということもできます。

お金を借りてまで買いたいものなのか、手持ち資金の予算内に収まっている買い物なのか、慎重に判断をする必要があります。

ポストペイ型のキャッシュレス決済の特微として、1カ月分をまとめて翌月に一括で銀行口座から自動引き落としで支払う場合手数料はかかりません。
ただし、翌々月以降に支払いを繰り延べて返済、定額払いで返済、提携ATMから返済などといった方法を選ぶと手数料が必要になるため注意が必要です。

申し込みの条件も、スマホ融資では「満20歳以上、定期的な収入がある」とされていますが、後払い、 翌月払いのスマホ決済の場合は「満18歳以上、学生も可」としている事業者もあり、 若年層が少額だからと気軽に利用し、返済できない事態に陥ることも懸念されます。

5.「個人向け融資」はできるだけ利用しない

融資を受けることを考えてもよい場面は、多額の資金が必要で、費用を準備してから手に入れるよりも先に入手したほうが著しくメリットが大きい、融資を受けたお金でそれ以上の投資効果が得られるといった住宅ローンや奨学金などに限るのが基本です。

スマホ融資で借りようとするお金は、少額であることが多いように思いますが、借りるお金はどうしても用意できないのか、貯まるまで待つことはできないのかをまず検討することが重要です。
スマホで手続きが完結することで、お金を借りることが給料の前借りのように手軽でカジュアルな行為と思えることはとても危険です。
郵送物やカードがないことで、家族や周囲の人に知られる心配が少ないことで、気がつかないうちにトラブルを大きくしてしまう可能性もあります。

手軽に融資を受けられるようになったからこそ、慎重な行動が求められます。利用する際は、賢く利用しましょう。