登記識別情報をなくした場合はどうすればいい?

不動産を売却し移転登記手続をするには、登記義務者(売主)の登記識別情報が必要(不動産登記法22条)なのですが、いざ探してみると見当たらないという事があります。

相続の場合などは、何十年も前に購入した不動産だったりするので、登記識別情報がないという事は、決して珍しいケースではありません。しかも、困ったことに、登記識別情報は再発行してもらえません。

では、遺産である不動産を処分する時などに、登記識別情報がない場合はどうしたらよいのでしょうか?

不動産登記法では、三つの方法が定められています。

まずは、法務局から登記義務者に対し、 「名義変更の登記申請がされましたが、そのとおり間違いありませんか」という通知(事前通知)がされ、登記義務者が2週間以内に署名押印して法務局に返送すれば登記手続がされます(23条1項) 。

法務局からの事前通知は「本人限定受取郵便」によってされ、本人以外の人は受け取れないようになっています。

二つ目の方法は、資格者代理人の本人確認情報という制度です。

登記の申請の代理を業とすることができる者(不動産登記規則72条1項の「資格者代理人」をいう。権利の登記については司法書士、弁護士)が、直接登記義務者と面談し、本人の運転免許証、パスポート、マイナンバーカード等の顔写真付き身分証明書などの提示を受けて、登記義務者本人であることを所定の確認方法で確認をし、本人に間違いない旨の書面(本人確認情報)を作成し、登記申請書と一緒に提出する方法があります。

三つ目の方法は、公証人が登記申請書等の書面に認証をする方法です(23条4項2号)。
一般的には、資格者代理人に対する登記の委任状に登記義務者本人が署名押印し、それを公証人が認証する形態が多いようです。

直接、登記申請書を認証することも可能ですが、実際には資格者代理人に対する委任状を公証人が認証することが多いようです。

認証には主に、直接本人が公証役場に赴き、署名押印する面前認証と、代理人が公証役場に赴き、 「書面の署名押印が本人のもので間違いない」と述べる代理認証がありますが、この場合、代理認証は認められません(平成17年2月25日、民ニ457民事局長通達)。

したがって、必ず本人が公証役場に行くか、本人が病気等の場合には、公証人が本人の自宅等に出張して認証をする必要があります。

公証役場では、実際にどのような流れで登記識別情報に代わる登記申請情報への認証が行われるのでしょうか。

まず、登記義務者本人の印鑑登録証明書(発行から3か月以内のもの)を提出し、更にもう1点、本人確認資料を提示します。それを基に、公証人が登記義務者本人に対し、氏名、生年月日等により本人確認をします。そして、何のための委任状なのかを、本人が理解しているかどうか確認します。

場合によっては、 「登記識別情報はどうされたのですか」と尋ねることもあるようです。
そして、公証人の面前で、登記義務者本人が署名押印をします。

この書面に公証人が認証をし、認証した書面を登記義務者に交付して終了です。

印鑑登録証明書のほか、本人確認資料として、顔写真付きの資料(運転免詐証等)が求められるのは、本人になりすまして、他人が登記識別情報を紛失したとして、登記申請情報への認証の申出をしてきた場合に備えてのことです。

本人の知らぬ間に大切な不動産につき移転登記がされてしまったら大変なことになりますからね。

公証役場で行う登記申請情報への認証の手数料は、委任状の認証の場合は3,500円、登記申請書の認証の場合は5,500円がかかります(2022年11月現在)。

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